第23回 子供の振る舞いの理由

今月のテーマは、<子供の振る舞いの理由>についてです。第14回では「ひといちばい敏感な子」について取り上げ、子供のペースに合わせた子育てが必要との説明がありました。この号は特に多くの感想をいただき、メルマガ執筆陣の励みになりました。ありがとうございます。では具体的にどのような子育てをしたらよいのか、と考えられた方も多くいらっしゃったでしょう。今回は、このことについて、もう少し考えてみたいと思います。

配信年月:2018年8月号

1. <子供の振る舞いの理由>

夏休みを過ごす子供たちを見ていると、水遊びが大好きな子、自然の中を駆け回る子、家でじーっとしている子など、子供なりに好きな時間の過ごし方があることに気づかされます。このような子供の何気ない行動上の好みの違いは、実は自己を管理するための自己調節の一部であるという研究があります。米国のウィニー・ダン教授(カンザス大学)は、日常生活における感覚処理の専門家で、子供が日常にどのような振る舞いをするかについて多くの親から聴き取り、「感覚プロファイル」を作るという支援方法(作業療法士が行う方法)を構築しました。ダン教授によると、例えば、廊下を歩きながら鼻歌を歌う、スキップする、壁をなでるといった行動をとる子供は、前向きに自己調節をする子供だと判断されます。このような子供は、自分が取る行動から新しい刺激が入力されることを経験的にわかっているというのです。一方、家の中にとじこもってじっとしている子供は、受け取る刺激を減らすために受け身の自己調節を行っていると考えられます。しかしあまりにとじこもっていると、周囲からの呼びかけや新たな学びのチャンスを逃す可能性があり、適切に気づかせることが必要だとされます。

ここで再び、「ひといちばい敏感な子」を登場させたいと思います。ダン教授らの研究では、感覚過敏があるということは閾値(いきち)が低い(非常に少ない刺激で反応が生じること)ため、過剰に反応してしまうのだと説明されます。過剰に反応しにくくなるには、その刺激に慣れることが必要になりますが、お子さんによっては、慣れること自体も難しいという場合があり、「このチクチクした洋服はイヤ」「大きな声を出す子はイヤ」という、大人からすると過剰な反応が起こってしまいます。このような場合、親としてどう接するのが良いのでしょう。

2. <「敏感」になっている原因を捜す>

長沼睦雄先生(精神科医師)は、「敏感さに対応するすべを身につければ生きやすくなる」と述べています。そして、そのためにはまず、敏感になっている原因を捜すことが必要であると言います。これは大人のHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)に向けられた言葉ですが、このようなお子さんを持つ保護者の方にも当てはまる言葉ではないかと思います。子供が、「泣き叫ぶ」「叩く」などしてしまうのは、環境からの刺激を自分に危害を加えるもの、あるいは危険なものとして解釈しているからなのかもしれません。そういった意味でも、「敏感」にさせる原因捜しをしたら、まずはその刺激を遠ざけること、子供が安心できるのを待つこと、そして似たような状況に遭遇することを避けることが第一に取るべき手段だと思われます。例えば、ある下着がいやだと言っている場合、下着の首にあるタグが肌に当たってチクチクするからいやだ、という場合があります。これが原因だとわかれば、タグを切り取ってしまえば(とりあえず)解決します。大きな音や明るい刺激が苦手な場合は、そういう場面を避けたり、自宅なら苦手な音がしないようにしたり、外なら耳栓(イヤーマフ)や遮光メガネを使った方がいい場合もあります。これは、永久にそうする必要があるということではありませんが、性急に強い刺激に慣れさせようと無理強いをしても改善しない(かえって悪化することもある)という理解が必要です。

ダン教授は、例えば、刺激にあまり反応しない(敏感ではない)タイプのお子さんには「様々な肌ざわりのタオルで身体を洗ったり拭いたりする」ことを、過敏なお子さんには「お気に入りの風味、食感、温度を探し、それに沿った物を提供すること」を勧めています。

過敏さを刺激しなくて子供が安心できる環境をある程度作れれば、次の段階としては、少しずつ刺激を強くしたり変化させたりして行きますが、その際、できるだけ他の楽しい刺激と一緒にするとうまく行くことがあります。

3. <吃音の豆知識>

日本ではまだあまり進んでいない研究分野ですが、海外では、一般の人が吃音をどのように捉えるのか、ということを明らかにしようとする研究があります。今回は、アメリカで行われた幼稚園の子供たちが吃音をどのように捉えたか、ということを調査した研究の紹介をします。この研究では幼稚園に行く前の3〜5歳児と幼稚園の5~7歳児(日本の小学校1年生相当の学年を含む)が対象で、吃音のあるアニメ・キャラクターが登場するビデオを見せた後に、子供たちへの質問がなされました。その結果、幼稚園に行く前の小さな幼児の方が吃音に対して否定的な態度を示しましたが、その傾向は一貫したものではなく、この時期の子供の捉え方は、質問項目ごとに違う反応を示すものであることがわかりました。さらに、幼児は吃音のある話し方の映像に対して笑ったり、どうしたら良いか分からないという仕草をしましたが、あとで質問したところ、かわいそうに感じていたり、しっかりとした人であると認識していたりしました。つまり、吃音があると劣っているとかおかしいというような、まとまった概念にはなっていないと思われます。この研究を行ったワイドナー(Weidner)博士らは、発達の早い段階に吃音のある人に会って話し方を聴き、接し方等の教育を受けることで、差別や偏見を持たずに成長するのではないかと結論づけました。

4. <参考文献・資料>

  1. Winnie Dunn著, 辻井正次監修(2015)日本版感覚プロファイル. 日本文化科学社.
  2. 長沼睦雄(2016)敏感過ぎる自分を好きになれる本. 青春出版社.
  3. Weidner M. E., St. Louis, K.O., Burgess, M.E., & LeMasters S. N. (2015) Attitude toward stuttering of nonstuttering preschool and kindergarten children: A comparison using a standard instrument prototype. Journal of Fluency Disorders, 44, 74-87